「例会」カテゴリーアーカイブ

2019-2020年度の例会

○2019~20年度 現代史研究会 12月例会
日時:2019年12月15日(日)14:00~18:00
場所:立教大学・池袋キャンパス9号館B 01教室
合評会:川喜田敦子著『東欧からのドイツ人の「追放」:二〇世紀の住民移動の歴史のなかで』
評者:山本明代氏(名古屋市立大学)、武井彩佳氏(学習院大学)
リプライ:川喜田敦子氏(中央大学)
本例会は東欧史研究会との共催でした。


○2019~20年度 現代史研究会 11月総会および例会
日時:2019年11月24日(土)11:00~18:30
場所:早稲田大学戸山キャンパス33号館3階・第一会議室
シンポジウム:「平成時代の現代史研究」
趣旨説明:小原淳(早稲田大学)
報告者および題目:
高橋秀寿(立命館大学) 「1989年」以後の現代史研究の課題―現代ドイツ研究者の立場から
伊豆田俊輔(獨協大学) 日本の東ドイツ研究の進展―1989-2019
今野元(愛知県立大学) 「世界に冠たる日本学界」への道―姫岡とし子氏の回顧談を契機に
コメント:
中澤達哉(早稲田大学)
中野隆生(学習院大学)
松本彰(新潟大学・名誉教授)

2018-2019年度の例会

○2018〜2019年度 現代史研究会 7月例会
日時:2019年7月13日(土)14:00~17:30
場所:東京大学本郷キャンパス・法文1号館115教室
報告題目:Protest, Planung und Partizipation: Katholiken in der Bundesrepublik nach 1968 (抗議、計画、参加ー1968年以降のドイツ連邦共和国におけるカトリック教徒)
報告者:ベンヤミン・ツィーマン(Benjamin Ziemann) 氏(イギリス・シェフィールド大学教授)
 * 科研基盤研究(B)「近代ヨーロッパにおけるカトリシズムの変容と持続をめぐる社会史的考察」との共催。


○2018〜2019年度 現代史研究会 6月例会
日時:2019年6月22日(土曜)12:30~
場所:明治大学駿河台キャンパス・リバティタワー8階1086教室
報告題目:「1956年ハンガリー事件と中国 ―ポーランド事件との比較の視点から―」
報告者:杜世鑫氏(日本伝統ビューロー 国際交流研究所)
コメンテータ:李永シュ氏(明治大学)


○2018〜2019年度 現代史研究会 4月例会
日時:2019年4月14日(日曜)14:00~
場所:早稲田大学・戸山キャンパス33号館(16階)第10会議室
「グスタフ・W・ハイネマン大統領と民主主義の伝統をめぐってー西ドイツの民主主義の発展とドイツ統一問題をめぐる言説に着目して一」
報告者:大下理世氏(東京大学・院)
コメンテータ:板橋拓己氏(成蹊大学)


○2018〜2019年度 現代史研究会 3月例会
日時:2019年3月16日(土曜)14:30~
場所:東京大学本郷キャンパス・法文1号館(1階)115教室
「1980年代の東ドイツにおける請願分析―環境汚染による健康問題に注目して-」
報告者:藤原星汰氏(広島大学・院)
コメンテータ:川喜田敦子氏(中央大学)


○2018〜2019年度 現代史研究会 1月例会
日時:2019年1月26日 14:00~
場所:早稲田大学戸山キャンパス 31-203教室
報告者:大久保里香氏(早稲田大学・院)
報告題目:「ドイツ・カトリシズムと優生学―1920~30年代の断種をめぐる議論を中心に」
コメンテータ:中野智世氏(成城大学)


○2018~2019年度 総会および11月例会
日時:2018年11月17日
会場:明治大学駿河台キャンパス研究棟2階第9会議室
 シンポジウム:公共史/パブリックヒストリと現代史ー『越境する歴史認識』をめぐってー
 基調報告:岡本充弘氏(東洋大学)「パブリックヒストリーの方法的可能性」
 事例報告:前田更子氏(明治大学)「歴史教育のいまー日仏比較からの若干の考察」
 応答コメント:剣持久木氏(静岡県立大学)「公共史のすすめ」

2017-2018年度の例会

○2017〜2018年度 現代史研究会 7月例会
日時:2018年7月14日(土)13:00~
場所:東京大学本郷キャンパス 法文1号館1階114教室
第1報告:犬飼崇人氏(学習院大学文学部史学科助教)
 報告題目:「フランス第三共和政期の林間学校活動から見る児童の貧困と衛生」
 コメンテータ:上垣豊氏(龍谷大学)
第2報告:松本祐生子氏(東京大学大学院人文社会系研究科博士課程)
 報告題目:「戦後スターリン期の祭典 モスクワ800周年記念祭を中心に(仮)」
 コメンテータ:瀧口順也氏(龍谷大学)


○2017〜2018年度 現代史研究会 6月例会
日時:2018年6月16日(土)14:00~17:00
場所:早稲田大学早稲田キャンパス 16号館106教室
合評会 橋本伸也編著『せめぎあう中東欧・ロシアの歴史認識問題――ナチズムと社会主義の過去をめぐる葛藤』(ミネルヴァ書房)
コメント:西山暁義氏(共立女子大学)、篠原琢氏(東京外国語大学)
リプライ:橋本伸也氏(関西学院大学)ほか分担執筆者


○2017〜2018年度 現代史研究会 4月例会
日時: 2018年4月22日(日) 14:00 ~
場所: 東京大学本郷キャンパス 法文1号館319教室
報告題目:「ナチスによる強制断種・『安楽死』の過去と戦後ドイツ-犠牲者および遺族に着目して-」
報告者:紀愛子氏(日本学術振興会特別研究員PD)
コメンテータ:小野寺拓也氏(東京外国語大学)       


○2017〜2018年度 現代史研究会 3月例会
日時: 2018年3月25日(日) 14:00 – 17:00
場所: 明治大学駿河台キャンパス 研究棟4階第1会議室
内容: 川越修・矢野久著『明日に架ける歴史学』書評および著者リプライ
書評者 高岡裕之氏(関西学院大学)
(*科研費・基盤研究(C)「東ドイツ社会国家にみるセクシュアリティと政治の関係性」 (研究代表者:水戸部由枝、研究課題番号:16K02051)との共催 )


○2017〜2018年度 現代史研究会 2月例会
日時:2018年2月23日(金)、15:00-18:00
場所:共立女子大学本館11階、1140講義室
講演者:レベッカ・ハーバーマス(ゲッティンゲン大学教授)
題目:Religious Mission in Global History: Knowledge Making in Colonial Times (英語による講演)
要旨:This paper argues that the role mission played for the making of modern knowledge has to be reevaluated. During the long nineteenth century European and American missionaries, be they catholic or protestant, began to build up a world-wide web of mission stations, connecting remote areas within different regions out and inside of Europe. One connected via mission newsletters and journals, this web not only helped to spread Christian faith and Christian rituals to the colonies. It also served as a network of various kinds of knowledge, gained on the ground by the missionaries who had to learn the language in their mission field as well as to gain a basic understanding of the respective community. They wrote entire language manuals and grammar books of thousands of until than in Europe unknown languages, they studied rituals, and observed natural phenomena in all parts of the world. This new world of missionary knowledge has not remained without influence on the making of new academic disciplines such as anthropology, religious studies botany and tropical medicine, all coming into being around 1900. However, missionaries not only had to offer an add-on to these disciplines, it shaped and reshaped some of them in a particular way and therewith contributed to modern epistemologies.
Having a fresh look at these contributions from a global history perspective offers new insights into the global dimension of modern knowledge production in the long nineteenth century. At the same time, it opens up new questions concerning the religious or vice versa secular dimension of these modern epistemologies.

講演者プロフィール:Rebekka Habermas is Professor for Modern History at the Georg August University Göttingen, Germany, since 2000. She received her PhD from the University of Saarbrucken and her habilitation (Frauen und Männer des Bürgertum. Eine Familiengeschichte, Goettingen: Vandenhoeck Rupprecht 2000) at the University of Bielefeld. She was guest professor at the EHESS, Paris and at the Université de Montréal; Richard von Weizsäcker Fellow at St Antony’s College/Oxford; Theodor Heuss Professor at the New School /New York. Her research fields are the social and cultural history of 19th century Germany, criminal history ( Thieves in Court. The Making of the German Legal System in the Nineteenth Century, Cambridge: CUP 2016) and religious. Her most recent research deals with colonial history (Skandal in Togo. Ein Kapitel deutscher Kolonialgeschichte (Frankfurt: S. Fischer 2016) history of missions and the history of colonial knowledge.


○2017〜2018年度 現代史研究会 12月例会
日時:2017年12月9日(土)14:00~
場所:東京大学本郷キャンパス、法文1号館114教室
報告者:田村円氏(東京大学大学院)
報告題目:「ホロコースト後のドイツ人とユダヤ人の相互理解の試み―カール・マルクス(1897-1966)の戦後初期の取り組みから」
コメンテータ:武井彩佳氏(学習院女子大学)

2016-2017年度の例会

○2016〜2017年度 現代史研究会 会員総会および11月例会(合評会)
日時:2017年11月18日(土)13:30~
会場:明治大学駿河台キャンパスリバティタワー7階 1075教室
1. 総会  13:30~14:00
2. 合評会 14:00~17:00
 〇クリストファー・クラーク著、小原淳訳『夢遊病者たち-第一次世界大戦はいかにして始まったか』(みすず書房、2017年)合評会
 評者:西山暁義(共立女子大学)、渡辺知(東海大学)
 リプライ:小原淳(早稲田大学)


○2016〜2017年度 現代史研究会 7月例会
日時:7月15日(土)14:00~
場所:成城大学 3号館3階 小会議室
報告タイトル:「第一次世界大戦期ドイツのカトリック戦場司牧――バイエルン軍従軍司祭の活動を中心に」
報告者:尾崎修治氏(静岡県立大学)
コメンテータ:丸畠宏太氏(敬和学園大学)
報告概要:
本報告は、第一次世界大戦の戦場で、カトリックの従軍司祭が兵士のためにおこなった司牧活動について、ドイツ、バイエルン軍の事例を中心に考察する。
 従軍司祭は、軍隊生活のなかで定期的にミサを執り行いつつ、ひとたび戦闘が始まれば、出陣前に兵士を鼓舞する説教をおこない、彼らのために秘跡を授け「神の加護」を祈り、野戦病院では傷病兵に寄り沿い、彼らを「神のもと」へと送り出し、埋葬に立ち会った。
そうした、従軍司祭の活動とその心性の考察を通じて、戦争における宗教の役割を考えたい。


○2016〜2017年度 現代史研究会 6月例会
日時:2017年6月3日(土)13:00~
場所:東京大学本郷キャンパス、法文1号館1階114教室

第一報告タイトル「明治初期日本における廃藩置県と藩債の継承」
報告者:小林延人氏(秀明大学)
コメンテータ:小幡圭祐氏(慶応義塾大学・日本学術振興会特別研究員PD)
報告概要:
近世期の日本(17~19世紀半ば)では、両替商などの商家が各藩に貸付を行っていた(大名貸)。
ところが、明治維新の過程で版籍奉還(1869)と廃藩置県(1871)が断行され、領主権力としての藩は消滅することとなる。 その際、明治維新政府は一部の藩債を政府の債務として継承し、一部の藩債を棄捐する藩債処分を行った。
本報告では、①公権力による財産権の保護という観点から、そして②近世期の資本蓄積を近代に持ち越すという観点から、大名貸の展開と藩債処分の商家への影響を分析する。

第二報告タイトル「第一次世界大戦直後のオーバーシュレージエンにおける分離主義運動」
報告者:衣笠太朗氏(東京大学大学院・日本学術振興会特別研究員)
コメンテータ:篠原琢氏(東京外国語大学)
報告概要:1920年の1年間において、ドイツとポーランドからの独立を目指す当該分離主義者が、パリ講和会議とヴェルサイユ条約、ポーランド側の蜂起などを経る中で、どのような活動を展開したのか検討する。


○2016〜2017年度 現代史研究会 4月例会
日時:2017年4月15日(土)14:00~
場所:明治大学駿河台キャンパス猿楽町校舎3階・史学地理学科共同演習室
【報告概要】
報告タイトル:「歴史を展示する―エノラ・ゲイ展にみるアメリカ合衆国の太平洋戦争観」
報告者:藤田怜史氏(明治大学)
コメンテータ:川口悠子氏(法政大学)
報告概要:
2016年6月、アメリカ合衆国の現職大統領としては初めて、バラク・オバマが原爆投下後の広島を訪問した。彼がそこで、第二次世界大戦が「残酷な形で」終わったと述べたことは、アメリカにおける戦争観の変化を示唆したように思われる。
本報告は、その約20年前に国立航空宇宙博物館が計画し、保守的・愛国主義的な圧力によって頓挫させられたエノラ・ゲイ展に着目する。これまでエノラ・ゲイ展に関しては、それを中止せしめた側の戦争観が注目されてきたが、本報告は、博物館側が示そうとした二次大戦像のなかに、上述した戦争観の変化の起源を見出すものである。
とりわけ、大戦中に大規模に展開された戦略爆撃について、博物館がどのような展示を試みたかに注目したい。そこに、オバマ元大統領が「残酷な形で」戦争が終わったと述べたこととのきわめて強い関連があると考えるからである。


○2016〜2017年度 現代史研究会 3月例会
日時:2017年3月29日(水)14:00~18:00
会場:明治大学駿河台キャンパス研究棟2階 第9会議室
【合評会】
近代ヨーロッパ史における宗教研究の意義を考える——『近代ヨーロッパとキリスト教——カトリシズムの社会史』(勁草書房、2016)を手がかりに
評者  関 哲行氏(流通経済大学)
    松嶌明男氏(北海道大学)
    井上茂子氏(上智大学)
概要
「世俗化のトップランナー」とみなされてきた近代ヨーロッパ。しかし近年では、歴史を動かし社会を形作る要因としての宗教に関心が寄せられつつある。
昨年刊行された『近代ヨーロッパとキリスト教——カトリシズムの社会史』(中野智世・前田更子・渡邊千秋・尾崎修治編著、勁草書房、2016年)を手がかりに、ヨーロッパの中世史、近代史、現代史の各領域から3人の評者を迎え、近現代史において宗教を研究対象として俎上にあげることの意義と可能性、課題、そして困難について、幅広く議論する場としたい。  

*本例会は、科学研究費助成事業基盤研究(B)「近代ヨーロッパ社会の形成・変容過程における宗教の役割――カトリシズムの社会史的考察(課題番号26284117)」との共催で行われました。


○2016〜2017年度 現代史研究会・東欧史研究会 12月合同例会
日時:2016年12月17日(土)13:30 ~17:30
会場:國學院大學 120 周年記念 1 号館 3 階 1304 教室
【合評会】
1. ヤーン・ユリーチェク著、長與進訳『彗星と飛行機と幻の祖国と――ミラン・ラスチスラウ・シチェファーニクの生涯』 (成文社、2015 年)
評者:香坂直樹氏
リプライ:長與進氏
2. ヘルムート・ラインアルター著、増谷英樹・上村敏郎訳『フリーメイソンの歴史と思想――「陰謀論」批判の本格的研究』 (三和書籍、2016 年)
評者:水野博子氏
リプライ:増谷英樹氏、上村敏郎氏


○2016〜2017年度 現代史研究会 11月例会
日時:2016年11月23日(水)13:00~
会場:明治大学駿河台キャンパス・リバティタワー15階1154教室
○第1報告
アンドレア・シュトゥルツ (Andrea Strutz) 氏(ルートヴィヒ・ボルツマン研究所歴史部門研究員)
Flucht, Vertreibung und Erinnerung: Intergenerationelles Gedächtnis in Familien österreichisch-jüdischer Vertriebener(「亡命、追放、想起―オーストリア・ユダヤ系被追放者家族の間世代的記憶―」)
概要:
本報告では、1938年のナチ・ドイツによるオーストリア併合後に生じたユダヤ系住民への迫害と、その迫害を逃れてニューヨークに渡ったオーストリア・ユダヤ系家族 における間世代的記憶を検討する。とくに、故郷とそこからの追放、人種的迫害の体験が、移住先で子や孫にどのように語り継がれ、家族の記憶を形成しているのか、聞き取り調 査に基づき考察する。
コメンテータ:木村真氏(日本女子大学)

○第2報告
モニカ・シュトロームベルガー(Monika Stromberger)氏(グラーツ大学講師)
Der Zweite Weltkrieg in der Gedächtniskultur Sloweniens und Österreichs. Ein Vergleich von Erinnerungsräumen in der unmittelbaren Nachkriegszeit
「スロヴェニアとオーストリアの記憶文化にみる第二次世界大戦―戦後初期における記憶空間の比較から―」
概要:
本報告では、旧ユーゴスラヴィアのスロヴェニア共和国とオーストリア・シュタイアーマルク州の記憶言説とその実践について、第二次世界大戦後から1960年代までを 比較検討する。とくに、語りの枠組みとしての「冷戦」と、理論的な基盤としての記憶空間論(アライダ・アスマン)を手がかりに、「英雄像」と「犠牲者像」の構築とその過程 における追悼の役割について考察する。その際、具体的な記念碑を参照し、社会主義と自由民主主義共和国の間には一見するよりも多くの共通性があることを示したい。
コメンテータ:山崎信一氏(明治大学)、藤井欣子氏(東京外国語大学)

※2016年~2019年度科研費(基盤研究(B))「青いウィーンにみる「最底辺」社会層の生活史―「下」からのグローバルヒストリー研究」(代表:水野博子) 及び明治大学西洋史ゼミとの共催で開催いたしました。

2015-2016年度の例会

○2015〜2016年度 総会および10月シンポジウム
日時:2016年10月22日(土)13:00~18:00
会場:明治大学 駿河台キャンパス 研究棟2階 第9会議室
1. 会員総会   13:00~13:30
2. シンポジウム 14:00~18:00
(1)タイトル 「『科学』と『人文学』の対話?―歴史の中の医学」
(2)報告者
開会挨拶・趣旨説明 磯部裕幸(現代史研究会 運営委員長)
報告① 土屋悠子氏(中央大学 客員研究員)
  「日韓の医療一元化社会と医療二元化社会―日本と韓国の近代医療制度史を比較して」
報告② 福士由紀氏(首都大学東京)
   「結核と近代華北社会」
報告③ 高林陽展氏(清泉女子大学)
  「20世紀英米圏における医学史のヒストリオグラフィと今日の課題」
報告④ 梅原秀元氏(慶應義塾大学 非常勤講師)
  「ドイツにおける医学史研究」
コメント 脇村孝平氏(大阪市立大学)
報告概要:
医学を含めた自然科学の「歴史性」や「社会性」を問う研究は、20世紀後半のいわゆる「STS(科学技術社会論)」や「ポストコロニアリズム研究」の影響を受ける形で本格的に始まり、近年でも例えばナチ・ドイツにおける医学のあり方や、19世紀の「帝国医療」と21世紀の「国際医療」との関係性を問う研究など、世界中で成果が続々と発表されている。
このような動向を見る限り、「歴史の中の医学」あるいは「医学の歴史性」というテーマは、歴史研究においてそれなりに地歩を固めたといえるだろう。
その一方で「医学」を歴史学の中で扱うということ、あるいは専門の医学教育を受けていない「普通の歴史家」が医学の問題を論じるということには、どのような意味があり、またどのような課題があるのか。このことについては、まだ議論の余地があるようにも思える。
本シンポジウムにおいては、「医学と社会」というテーマで韓国・中国・イギリス・ドイツ・インドなどの事例研究に携わってきた研究者の報告を通して、「科学と人文学」の接点について考える機会としたい。あわせてこのテーマが持つグローバルな性格や、新しい「世界史」の可能性についても議論を深めることができればと考えている。


○2015〜2016年度 7月例会
日時:2016年7月31日(日)14:00~
会場:立正大学 品川キャンパス(大崎) 5号館 52C教室
報告者:小澤 一郎氏(上智大学アジア文化研究所)
報告タイトル:近代イランにおける「非公式」武器移転の展開とインパクト:現代の武器移転との比較の視点から
コメンテータ:工藤 晶人氏(学習院女子大学)
報告概要:
19世紀後半、火器の製造・使用における「近代」の到来とともに、戦争による武器拡散、密輸といった形でイランへの「非公式」武器移転が活発化する。本報告で1870年代から第1次大戦期までの時期についてその展開を跡付けるとともに、その結果としての現地社会の武装化がイランの歴史的展開に与えた影響を明らかにする。また、その中で重要と思われるいくつかの要素について、現代の同様の現象との比較を行い、共通点・相違点を浮き彫りにすることを試みる。近代フランス・ユダヤ人史における彼の位置づけを再検討することにある。


○2015〜2016年度 6月例会
日時:2016年6月18日(土)14:30より
会場:明治大学御茶ノ水キャンパス・猿楽町第二校舎3階・史学地理学科共同演習室
報告者:山本耕氏(明治大学大学院文学研究科博士後期課程)
報告タイトル:「マスメディアを通じたフランス・ユダヤ人コミュニティ再編の試み――1930年代におけるユダヤ系フランス人レモン・ラウル・ランベールの記名記事分析」
コメンテータ:加藤克夫氏(島根大学名誉教授)
報告概要:
1930年代におけるフランスのユダヤ人コミュニティは、19世紀から続く移民の流入によって、多様な政治的、経済的、社会的そして文化的背景を有する人々によって構成されていた。この時代に、彼らは反ユダヤ主義の高揚をはじめとした諸問題に直面し、その対応に苦慮していたのである。本報告は、ユダヤ系フランス人指導者のひとりであったレモン・ラウル・ランベール (Raymond-Raoul Lambert, 1894-1943) が、新聞を通じてユダヤ人コミュニティに発していた主張を分析する。その目的は、彼の主張が生み出されてきた時代背景やコミュニティの状況を明らかにし、近代フランス・ユダヤ人史における彼の位置づけを再検討することにある。


○2015〜2016年度 5月例会
日時:2016年5月15日(日)13:20-
会場:法政大学市ヶ谷キャンパス ボアソナードタワー24階 人間環境学部会議室室
報告者:松岡昌和氏(秀明大学非常勤講師)
報告タイトル:「日本占領下シンガポールにおける文化政策」
コメンテータ:瀧下彩子氏(東洋文庫研究員)
報告概要:
本報告では、1942年2月より1945年9月まで日本陸軍によって軍政が敷かれ、「昭南島」と改称された日本占領下シンガポールにおける文化政策について論じる。本報告の目的は、第一義的には3年半に渡る日本軍の統治の中でどのような文化政策が実施されたのかを歴史資料から明らかにしていくことにある。その上で、日本が戦時期に軍政を敷いた東南アジア地域、南方占領地における文化政策の問題点を指摘するとともに、南方占領地での文化政策の限界やそこで動員された日本人たちの東南アジア観についても考察を行う。まず、日本内地での南方文化工作について、音楽と映画を取り上げて論じ、さらに日本占領下シンガポールにおけるメディア状況を概観することで、議論全体の前提としたい。その上で、日本占領下シンガポールで提供された文化プログラムについて、音楽・映画・昔話を取り上げて、実際の「大東亜文化」建設の限界を指摘したい。続いて、文学者・漫画家といった占領地で文化政策に携わった従軍「文化人」の活動に焦点を当て、かれらの現地社会や戦争との向き合い方を考察する。
以上の議論から、戦時期日本の占領地における文化政策のあり方とその限界について整理する。


○2015〜2016年度 4月例会
日時:2016年4月23日(土)14:00−18:00
会場:立正大学品川キャンパス1021教室
報告者:秋山千恵氏(明治大学非常勤講師)
報告タイトル:ヴァイマル期ドイツの映画と社会民主党―社会民主党の映画政策をめぐって―
コメンテータ:川手圭一氏(東京学芸大学)
報告概要:
ドイツにおいてラジオや映画などの大衆文化が大きく展開するのはヴァイマル時代である。 この新しいメディアは、聴覚や視覚を媒体にして商品化された文化産業である。
本報告では、社会民主党と映画との関係を考える。 社会民主党は結党以来、文字媒体を中心にその基盤を確立し、労働者文化運動を展開してきた。 文化政策の指導層は、その運動を市民層の「教養」にならって労働者の文化を「高尚化」することをねらいとしてきた。 このような社会民主党が映画産業の隆盛に直面して、映画という大衆文化にどのように対応したのかを明らかにしたい。 その際に、社会民主党の文化政策指導層の芸術・文化観と映画をめぐる議論、実際の映画活動、党機関紙『前進』の映画評論、この三点を中心に検討する。 ヴァイマルの時代状況のもとで映画をとおして社会民主党の文化運動がもった可能性や葛藤を検討することで、ひいては政治と文化について考える一助としたい。


○2015〜2016年度 3月例会
日時:2016年3月6日(日)13:00−17:00
会場:慶應義塾大学三田キャンパス大学院棟313教室
報告者:
小澤実(立教大学文学部准教授) はじめに
松沢裕作(慶応義塾大学経済学部准教授) 『近代日本のヒストリオグラフィ―』の意図と達成
コメンテーター:菊地重仁(青山学院大学文学部准教授) 近代日本におけるヨーロッパ中世研究:ドイツ歴史学界との関わりから
小山哲(京都大学大学院文学研究科教授) 「史学史」の線を引き直す――ヒストリオグラフィーにおける「近代」をどう捉えるか
岸本美緒(お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科教授) 近代東アジアの歴史叙述における「正史」
概要:
松沢裕作編『近代日本におけるヒストリオグラフィー』(山川出版社、2015)が刊行された。「歴史をいかに叙述すべきか」を模索していた時代、すなわち近代歴史学の成立とその知見に基づく歴史記述の誕生に焦点を絞った日本初の論集である。本シンポジウムでは、この記念碑的な論集を、それぞれの分野における学知のありかたに関心を持つ西洋中世史・古文書学、西洋近代史、中国史の専門家が読み解くことにより、交流史並びに比較史的観点から、日本における歴史学と歴史記述の意義を明らかにしたい。編者による論点開示、3人の評者によるコメントののち、8人の執筆者を含めたフロアを交え討議を行う。


○2015〜2016年度 2月例会
日時:2016年2月15日(月)14:00~17:00
会場:共立女子大学 神田・一ツ橋キャンパス 本館11階1208講義室
報告者:ゲルト・クルマイヒ(Gerd Krumeich)(デュッセルドルフ大学名誉教授)
:Von der Kriegsschulddebatte zur Internationalisierung? Ein Rück- und Ausblick auf die Forschungen zum Ersten Weltkrieg
(戦争責任論争から国際化へ?第一次世界大戦研究の回顧と展望)
コメンテーター:鍋谷郁太郎(東海大学)
司会:西山暁義(共立女子大学)
報告概要:
歴史研究というものはそもそも国際的であり、実際特定の歴史テーマについて多くの国の研究者による協力や競合が存在する。 しかしながら、第一次世界大戦研究の国際化の方向性については、ここ20年間で問題を組織化し、決定的に進化させてきた2つの新たなアプローチが存在する。それはまず大戦研究センター(フランス・ソンム県ペロンヌ)によって提起された、とりわけ心性史にかんする比較史研究の問題である。 ここでは「(開戦時の)八月の体験」、兵士の戦闘動機、戦時占領、残虐行為などの問題が新たに提起され、議論されてきた。このきわめて生産的であったアプローチは、ここ数年、そもそも一国史的な視点ではなく、国民間の相違よりもそれを越えたあらゆる種類の戦争体験の共通点を重視するトランスナショナルな歴史を求める要求によって上掛けされるようになっている。 本講演において、私はこの両方の方法論的なアプローチを批判的に検討し、いくつかの具体的な例をもとに比較史研究の最も重要な成果を提示することにしたい。その際、とくに、最近クリストファー・クラークらによって新たに提起された「戦争責任」をめぐる議論の歴史について着目することにしたい。


○2015〜2016年度 1月例会
日時:2016年1月24日(日)14:00~18:00
会場:学習院女子大学7号館734教室
報告者:門間 卓也氏(東京大学大学院)
報告タイトル:クロアチア独立国における「ウスタシャ精神」の表象
-『スプレムノスト』紙におけるプロパガンダの分析を中心に-
コメンテーター:清水明子氏(慶応義塾大学)/新谷崇氏(東京外国語大学)
報告概要:クロアチア独立国(1941-45)で政治運営を担ったウスタシャは、自らの超国家主義に則し、あらためてクロアチア民族の統合と刷新を図るため、「ウスタシャ精神」の確立と浸透に様々な方策で取り組むことになった。但しナチ・ドイツの傀儡国家として強力な統治機構やイデオローグが存在しなかった独立国内では、「ウスタシャ精神」の言説的表象も、地政学的概念としての「東」「西」の再考、ムスリム文化の包摂、エリート層の形成、それらを含めたクロアチア民族としてのネイション像の在り方を巡り、一様でない姿を現すことになる。本報告では、そうした「ウスタシャ」のイデオロギーの多義性又は曖昧性について指摘すると共に、主要なプロパガンダ媒体の一つである週刊紙『スプレムノスト Spremnost』に掲載された種々のテクストを史料として、「ウスタシャ精神」が構築又は変容される過程について考察する。


○2015〜2016年度 12月例会
日時:2015年12月13日(日)14:00
会場:立正大学 品川キャンパス(大崎) 5号館 52C教室
報告者:芦部彰氏(東京大学大学院 人文社会系研究科 研究員)
報告タイトル:「戦後西ドイツの社会政策とカトリシズム-1950年代におけるキリスト教民主同盟の住宅政策構想に注目して」
コメンテータ:中野智世氏(成城大学)
報告概要:
1950年代の西ドイツにおいて、住宅不足の解決は第二次世界大戦後の復興を進めるうえで重要な課題であった。それと同時に、住宅政策には、冷戦の東西対立という同時代の分脈の中で、西ドイツが理想とする人間像や社会像を体現する住宅を提示し、東側との違いと東側に対する優越性を示すことも求められた。こうした中で、キリスト教民主同盟(CDU)は、1950年の第一次住宅建設法によって開始された「社会的住宅建設」内での、戸建て持ち家住宅建設の優先を主張し、1956年の第二次住宅建設法でその主張を貫徹した。CDUはカトリック、プロテスタントの両宗派を包摂しようとする超宗派政党であるが、この政策の推進に大きな役割を果たしたのは、カトリックの政治家、知識人、実践家であった。本報告では、彼らが提示した住宅はどのような理念に立脚していたのか、カトリック社会教義の原則的な内容に即して考察し、戦後西ドイツにおける社会政策とカトリシズムの関係の一端を明らかにしたい。